医療現場で横行する前残業の実態に迫る

残業をして、残業代を受け取ることは、労働者としての当然の権利です。しかし、病院は人材不足かつ突発的な業務が多く、「ある程度の残業は当たり前」という雰囲気になっている場所が少なくありません。それを現す事例として、看護師の中では、始業時間前に出勤して仕事をする「前残業」が横行しています。実際、残業を少なくするために早く出勤する、前日分の残りを翌日早く出勤して片付けるという人は珍しくありません。

さらに、こうした前残業をすることは仕方がないことだと受け入れている人が多いようです。とある調査によると、実際に業務開始時間よりも早く来て仕事をしている看護師は、約8割を超えているというデータがありました。前残業ももちろん就労時間に当たります。もし病院側から「早く出勤するように」といわれたのであれば、これは労働時間となるため残業代が請求できます。突発的に上司から、「研修の準備のために早めに出勤してほしい」と口づてでいわれた場合でも、残業代が請求できます。

一方、特に上司からいわれたわけでなく、他の人も早めに出勤しているからそれに合わせて自主的に出勤していたり、通勤ラッシュの時間を避けて早い時間に出勤していたりする場合は、労働時間と見なされません。前残業をしなければ空気が悪くなるような職場は、スタッフを大事にしておらず健全な場所とはいえません。違和感を感じているのなら、信頼できる人に相談したり、転職を検討したりするのが賢明です。